酸素について・・・

街でよく「高圧ガス」というステッカーを貼ったトラックやバンなどを見かけます。これは高圧ガス保安法により義務付けられているもので、この法律は高圧ガスによる災害を防止するため高圧ガスの製造、貯蔵、販売、輸入、移動、消費、廃棄等を規制するものです。しかし救急車や赤とんぼ号のように酸素ボンベを積載した介護タクシーなど、この「高圧ガス」のステッカーは貼っていませんがこれって法律違反?…いやいやご安心ください。高圧ガス保安法では公道における高圧ガス輸送(移動)について輸送する量と種類によって規制内容を細かく定めています。
救急車や介護タクシーが扱う高圧ガスの種類は酸素(医療用)で、積載量は救急車では1500Lボンベ(10L容器)が3本と携帯用に300Lボンベ(2L容器)2本、我が赤とんぼ号(介護タクシー)でも500Lボンベ(3.4L容器)を最大3本まで程度の積載量です。これは高圧ガス保安法内の積載ガス種区分:酸素及び可燃性ガス、積載量区分:微量(容器の内容積が20リットル以下の充てん容器等を積載し、合計が40リットル以下)という扱いになります。このカテゴリーでは、①容器を40℃以下に保持②転落転倒等による衝撃とバルブの損傷防止(内容積が5リットル以下のものは除く/一般には圧縮ガス0.5m3以下の容器)③酸素と可燃性ガスの容器等のバルブが相互に向き合わないようにする、という制限・規制項目が定められているのみです。
従って「高圧ガス」ステッカー表示も免除されているということになるのです。

さて、前記述中の酸素ボンベには酸素が高圧で充填されています。なぜ高圧なのか?ですが、答えは少量の容積(小さな容器)に出来るだけたくさんの酸素ガスを入れるため、高い圧力で酸素ガスを押し込んでいるのです。
我々は普段大気圧力下で生活しています。天候や標高などで差は生じますが、ほぼ1気圧です。酸素ボンベの容器は3.4Lなので、ここに1気圧の酸素があったとするとそれは「1気圧の酸素が3.4Lある」ということです。我々が呼吸する際の圧力は1気圧(=標準大気圧 1atm=0.1MPa =1013.3hPa)で、言い換えれば「吸入できる酸素が3.4Lある」となります。しかしこの量ではまったく足りません。そこで同じ3.4Lのボンベに強い力(高い圧力)で酸素ガスを充填します。現在、未使用の3.4Lの酸素ボンベには14.7MPaという高い圧力で酸素ガスが充填されています。

☆気体の体積☆
・温度一定で一定量の気体の体積Vは圧力Pに反比例する:ボイルの法則
・一定量の気体体積は圧力に反比例し絶対温度に比例する:ボイル・シャルルの法則

前述でボンベに充填された「14.7MPaの酸素3.4L」を「吸入できる(0.1MPaの)酸素量」に換算するとき、このボイルの法則(PV=一定)にて求める事が出来ます。従って、
P(14.7MPaの酸素)×V(体積3.4L)=P(0.1MPaの酸素)×V(求める体積)となり、これを計算すると求める酸素量は499.8L(温度が同じ場合)となります。

実際は気体の体積は温度影響も受けるので、ボイル・シャルルの法則も併せて覚える
必要があります。詳しくはこちらで。
○わかりやすい高校物理の部屋

その他、お役立ち情報は以下の通りです。
○酸素ボンベ残量について:小池メディカル(PDF)
○酸素ボンベ残量計算ツール:CASIO
○圧力単位換算:流体工業株式会社