より確実に輸液投与が必要な患者に対して輸液ポンプを用いるケースが多くあります。当然医療移送においてはこのような患者を搬送することも想定しておかなければなりません。機器の取り扱いについては医療従事者の範囲なのでここでは割愛しますが、前面の操作パネル面を開けると輸液チューブを装着する溝が有り、ここに各種センサーや輸液を圧送する機構(ローラー方式やベリスタルティック方式、またはその複合式)などによって輸液をコントロールする仕組みになっています。この輸液ポンプを使用しなければならない搬送における、車内で機器を使用する場合の注意点を明記してみます。
■輸液ポンプ使用に当たっての注意点
①車中にて使用する場合、電源はかならずアース付きの正弦波インバータを使用。
内蔵バッテリの使用可能時間は機種・電池の劣化度合いで異なるので、移動時等AC
電源の取れない場合のみの使用に留めること。
②輸液ポンプ作動が正常であるか確認(例:テルモTE161Sでは「開始」表示ランプ
が緑色に点滅)
③点滴中、刺入部・輸液ルート全体・患者の全身状態に注意して継続的に観察する
ことが必要(点滴の滴下状況を点滴筒で定期的に確認)
さらに、輸液ポンプには万が一の場合を知らせるアラーム(警報、ブザー)機能が
あります。その時に慌てない様に、輸液ポンプのアラーム対応について確認して
おきます。(判断及び対応は医療従事者に委ねます)
■輸液ポンプ各アラームの原因と対応
①閉塞アラーム:輸液ルートが何らかの原因で遮断され輸液が送られていない状態。
(原因1)クレンメ・三方活栓等により輸液ルートが閉塞→クレンメ・三方活栓部を確認、開通させる。
(原因2)輸液ルートの屈曲・圧迫により輸液ルートが閉塞→屈曲・圧迫有無確認、解除する。
(原因3)末梢静脈ライン内での凝固血液・薬剤の結晶等による閉塞→輸液ルートへの逆流確認、完全閉塞の場合は静脈内留置針入替
②気泡混入アラーム:輸液ルートが何らかの原因で気泡混入
(原因)輸液ルート内気泡混入→停止スイッチを押しクレンメを閉じる。
*輸液ルートの開放は感染防止の為行わない。またフリーフロー防止の為必ずクレンメを閉じてから対処する。
③電圧低下アラーム:AC電源が供給されず、内臓バッテリの電圧が規定以下になって
しまった状態。
(原因)AC電源コード接続忘れ、外れなど。また車内インバータ不良や故障→AC電源コードの接続確認、復旧。インバータ確認、交換。
*車内でのAC電源コードの取回しに十分注意。インバータの電源は単独ラインを確保、アクセサリから取らないこと。予備保有。
■アラーム対応時の注意点
・フリーフロー発生を防ぐ:薬剤が全開状態で自然落下投与されてしまわないように
必ず「クレンメを閉じてから」ドアを開け、輸液ルートを外すという手順を厳守すること。
・輸液ポンプ作動時の不滴下防止:輸液チューブは正しく真直ぐにセットすること。
事後点滴チャンバーで滴下確認をすること。
なお、搬送時における車内での輸液ポンプの設置場所は、点滴バッグ直下の点滴棒に
専用台をクランプ固定しますが、ストレッチャー搬送時に限り車内に用意した別の点滴棒に備え付けます。これはストレッチャー専用の点滴棒が収納式の為、細くポンプ重量の荷重に対して安定性が悪くなる恐れがあるためです。車の振動や予期せぬ大きな揺れ、体動等、万が一に備え(長距離搬送では特に)予備の輸液ルートを確保して頂くことも必要かもしれません。
☆おまけ講座:輸液ポンプ概要(テルモTE161Sの場合)☆
■消費電力:AC時/20VA、DC時/11W、内蔵バッテリ(Ni-Cd電池)連続使用時間/約2時間(流量25mL/hでの連続送液、周囲温度25℃、新品バッテリ満充電時)
■ポンプ方式:「ミッドプレス」方式(チューブを完全に押しつぶさずに送液する機構を設けたペリスタルティックフィンガー方式)
■外形寸法:87(幅)×218 (高さ)×188 (奥行)mm (突起部を含む)、重量2.1Kg
(旧ブログ2014年06月18日作成記事の転載)