歩行補助具について・・・

高齢化が益々進む中、老老介護という現実に直面するのも稀なことではありません。現に高齢の旦那様に高齢の奥様が付添い病院を受診する、というお客様も多々存じ上げております。こうしたお客様においては、ご利用者以上にお付添いの方への介助・見守りの比重が自然と高くなります。このような時は車椅子やストレッチャーご利用者よりも先にお付添いの方の見守り誘導を優先して行い、安全を確保してからご利用者の昇降介助を行うように心がけています。加齢や怪我などにより、立っている時や歩いている時のバランスが悪くなったり、長距離の歩行が困難であるお付添いの方の為に、弊社では歩行器や杖をご用意しております。

歩行器や杖を使用することにより、歩くことが楽になり、歩行距離を延ばすことや歩行速度を早めることができ、通院時のお付添いの負担を軽減することになります。お付添い以外でも、普段の生活においても今まで家に閉じこもりがちだったのが、杖などを使う事によって外出するのが楽しみになることかと思います。
杖や歩行器には種類も多く、身体の状態により使用するタイプがありますので、ご自身で購入、またはレンタルする際には、より適したものを選びたいものです。最近は機能だけでなく、色々なデザインのものがありますので、ご自分の生活シーンに合ったものが選択可能です。

☆一本杖☆
家の中の生活は自立していますが、外出するのがちょっと不安な方向け。
グリップ部分を握り、杖の先を地面について歩きますが、特別な扱いは必要ないため初めて使用する人もすぐに慣れることができます。シンプルな形状で比較的軽量のため高齢者が持ってもそれほど負担になりません。持ち手(グリップ)が一般的なL字(ステッキ)型や体重のかけやすいT字型 があり、携帯しやすい2折や4折のタイプ、身長に合わせて長さ調節可能なもの、先端に滑り止めゴムや自在ゴムが付いたもの、軽量なアルミ製などがあります。

☆多脚杖☆
一本杖では足元が安定しない、脚力が低下している、という人におすすめです。杖先が多点で安定しているため、姿勢が悪い人や、背骨が曲がった人にも適しています。自宅内や施設・病院内の移動がメインの方向き。
地面と接する杖先が1点であるT字杖に対して、杖先が3点、あるいは4点の杖で、支えてくれるポイント(支柱)が多く、安定性が高いという特徴があります。多脚杖は段差のない平らな場所(病院や介護施設)などでは非常に便利ですが、段差のある屋外では不安定になりやすく、かえって転倒するおそれもあります。使用する場所や環境を考慮しましょう。
○杖ステッキなんでも情報館

☆歩行車(シルバーカー)☆
私もこの投稿をするまでシルバーカー=歩行車と思っておりましたが、実は、シルバーカーは歩行にあまり問題のない方が利用することが多い様で混同されがちです。構造的にもまったく異なりますのでご注意下さい。ちなみに歩行車は介護保険適用されますが、シルバーカーは介護保険適用外となるそうです。
歩行車は歩行器の一種と分類され、さらに屋外用が歩行車、屋内用が歩行器と区別されているようです。歩行器・歩行車は、歩行時に支えが必要な方が歩行補助として使用します。製品に体重を預けてもいいように、フレーム構造や重量が設計されており、ハンドル形状も基本的にはコの字(U字)型で姿勢を正して歩行できる様になっています。(写真)
一方でシルバーカーは歩行が自立している人が、買い物や散歩などで荷物を入れて移動したり、外出時のお供(休憩する時腰かけとして休む事ができる)などを用途として設計されており、極端に体重を預けて押してしまうと転倒する危険性があります。
○歩行用品の選び方

酸素について・・・

街でよく「高圧ガス」というステッカーを貼ったトラックやバンなどを見かけます。これは高圧ガス保安法により義務付けられているもので、この法律は高圧ガスによる災害を防止するため高圧ガスの製造、貯蔵、販売、輸入、移動、消費、廃棄等を規制するものです。しかし救急車や赤とんぼ号のように酸素ボンベを積載した介護タクシーなど、この「高圧ガス」のステッカーは貼っていませんがこれって法律違反?…いやいやご安心ください。高圧ガス保安法では公道における高圧ガス輸送(移動)について輸送する量と種類によって規制内容を細かく定めています。
救急車や介護タクシーが扱う高圧ガスの種類は酸素(医療用)で、積載量は救急車では1500Lボンベ(10L容器)が3本と携帯用に300Lボンベ(2L容器)2本、我が赤とんぼ号(介護タクシー)でも500Lボンベ(3.4L容器)を最大3本まで程度の積載量です。これは高圧ガス保安法内の積載ガス種区分:酸素及び可燃性ガス、積載量区分:微量(容器の内容積が20リットル以下の充てん容器等を積載し、合計が40リットル以下)という扱いになります。このカテゴリーでは、①容器を40℃以下に保持②転落転倒等による衝撃とバルブの損傷防止(内容積が5リットル以下のものは除く/一般には圧縮ガス0.5m3以下の容器)③酸素と可燃性ガスの容器等のバルブが相互に向き合わないようにする、という制限・規制項目が定められているのみです。
従って「高圧ガス」ステッカー表示も免除されているということになるのです。

さて、前記述中の酸素ボンベには酸素が高圧で充填されています。なぜ高圧なのか?ですが、答えは少量の容積(小さな容器)に出来るだけたくさんの酸素ガスを入れるため、高い圧力で酸素ガスを押し込んでいるのです。
我々は普段大気圧力下で生活しています。天候や標高などで差は生じますが、ほぼ1気圧です。酸素ボンベの容器は3.4Lなので、ここに1気圧の酸素があったとするとそれは「1気圧の酸素が3.4Lある」ということです。我々が呼吸する際の圧力は1気圧(=標準大気圧 1atm=0.1MPa =1013.3hPa)で、言い換えれば「吸入できる酸素が3.4Lある」となります。しかしこの量ではまったく足りません。そこで同じ3.4Lのボンベに強い力(高い圧力)で酸素ガスを充填します。現在、未使用の3.4Lの酸素ボンベには14.7MPaという高い圧力で酸素ガスが充填されています。

☆気体の体積☆
・温度一定で一定量の気体の体積Vは圧力Pに反比例する:ボイルの法則
・一定量の気体体積は圧力に反比例し絶対温度に比例する:ボイル・シャルルの法則

前述でボンベに充填された「14.7MPaの酸素3.4L」を「吸入できる(0.1MPaの)酸素量」に換算するとき、このボイルの法則(PV=一定)にて求める事が出来ます。従って、
P(14.7MPaの酸素)×V(体積3.4L)=P(0.1MPaの酸素)×V(求める体積)となり、これを計算すると求める酸素量は499.8L(温度が同じ場合)となります。

実際は気体の体積は温度影響も受けるので、ボイル・シャルルの法則も併せて覚える
必要があります。詳しくはこちらで。
○わかりやすい高校物理の部屋

その他、お役立ち情報は以下の通りです。
○酸素ボンベ残量について:小池メディカル(PDF)
○酸素ボンベ残量計算ツール:CASIO
○圧力単位換算:流体工業株式会社

パルスオキシメーターについて・・・

病院など医療現場でよく見かける、指に挟んで何やら測定している機械・・・そう、それがパルスオキシメーターです。今でこそ周知の医療機器ですが、ちょっとだけ詳しく調べてみました。

☆パルスオキシメーターとは☆
気管支喘息や肺炎などの呼吸器系の疾患に欠かせないパルスオキシメーター。このパルスオキシメーターは、赤色・赤外の2種類の光を利用して、血液中のヘモグロビンのうち酸素と結びついているヘモグロビンの割合(血中酸素飽和度/SpO2)をパーセント%で表示する医療機器です。脈拍、体温、血圧、呼吸に加えSpO2は第5のバイタルサインと呼ばれています。疾病の重症度判定、在宅酸素療法下での酸素処方や患者の管理指導、呼吸疾患スクリーニング、診断、経過観察、自己管理などの様々な目的で利用されます。

☆SpO2って何?☆
SpO2は「oxygen(酸素)のsaturation(飽和度)をpercutaneous(経皮的)に測定する」という意味で、日本語では「経皮的動脈血酸素飽和度」といいます。肺に取り込まれた酸素は、鉄を含んだヘモグロビンと結合することで全身に運ばれますが、酸素飽和度とは、動脈の赤血球中のヘモグロビンが酸素と結合している割合をパーセンテージで示したものです。正常であればその結合の割合は96~99%の値を示します。経皮的とは「皮膚を通して」という意味ですが、なぜ「経皮的」とわざわざ明記されているかというと、血液中の酸素飽和度の測定方法には二通りあり、実際に血液を採血して測定する方法「SaO2(動脈血酸素飽和度)」と区別するためです。(SaO2とSpO2の値はほぼ同じ値になる)

経皮的の最大のメリットは採血する必要がない点。血液の色は単純に「赤」と思われがちですが、そもそも血液の血漿(けっしょう)は薄い黄色で、赤血球があることで赤く見えます。血液は酸素とヘモグロビンが結合することでさらに赤色が鮮やかになります。SpO2は指の先端部分に挟んだプローブから光を出して動脈の赤色の色の度合いを測定するため採血が必要ないのです。

☆SpO2と疾患の関係☆
SpO2は96~99%が理想的な値ですが、疾患によっては数値が低下することがあります。代表的なのは、気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫などです。SpO2の値があまりに低いと、酸素不足によって酸素と結合するヘモグロビンが少なくなって血液の赤色の鮮やかさが弱くなり、皮膚や粘膜が青紫色になるチアノーゼが現れることがあります。チアノーゼ出現は低酸素状態を示しているため、迅速に医師に連絡して指示を仰ぐ必要があります。

パルスオキシメーター知恵袋

☆おまけ☆
昨今パルスオキシメーターも価格がこなれてきて、だいぶ安価に入手できるようになりました。弊社で使用するパルスオキシメーターは小池メディカル製で、購入当時2万円を超えていました(それでも他製品に比べると安かった!)が、現行同モデルで3~4割安で購入できます。さらに5~7千円位(写真右)の廉価モデルも多数あります。安いと言ってもしっかり国内医療機器認証済となっています。
個人用に使うパルスオキシメーターは何と1300円で入手したもの。(もちろん新品)さすがにこれは医療機器認証はされていませんが、測定値が1~2カウント低く出るものの、再現性は問題ないようです。

血圧測定について・・・

血圧を測定する計測器には、水銀血圧計・アネロイド血圧計・電子式血圧計(自動血圧計)などがあります。私たちが自分で血圧を測る時は、手首あるいは上腕式のデジタル自動血圧計を用いることがほとんどです。会社などではアームイン式の大型デジタル血圧計が設置されている場合もありますが、どちらも自分で簡単に血圧を測定することが出来ます。最近は病院などでもデジタル血圧計を使う場合が多いようですが、今回はアネロイド血圧計を使用した血圧測定方法を勉強したいと思います。

アネロイド血圧計のアネロイドとはギリシア語で液体(水銀)を使っていないという
意味で、原理は水銀血圧計と同じです。アネロイド血圧計は「聴診法(コロトコフ法・
K音法)」と呼ばれる方法で血圧を測ります。(電子式血圧計は「オシロメトリック法」
という測定方法となります)
聴診法は測定器のカフ(腕帯)で対象者の動脈部分を締め付けて血流を止め、締め付けを解いた際の血管内の脈音(コロトコフ音)で血圧値を測定するものです。脈音を聴診器で聴き取る方式で、最高血圧値は脈音が聴こえ始めの音最低血圧値は脈音が消失したときの音で判断します。

☆測定手順概略☆
(1) 血圧計を垂直に検査台に設置し、対象者の測定部位(主に腕)を心臓と同程度の高さにします。この血圧計の場合、測定部位が心臓の高さと違っていると正確な数値を得ることはできないので注意が必要です。

(2) 血圧計のカフ(腕帯・マンシェットともいう)の空気を完全に抜いた状態で広げ、対象者の腕に巻き付けて留めます。このときカフのチューブが出ている部分を対象者の上腕動脈に当てるように、カフの下縁が肘窩より2~3センチ上に巻くのがコツです。

(3) 聴診器をカフに挿入し、肘上2~3センチの脈音が聴きやすい部位に調節します。聴診器を耳に装着して予想血圧値+20~30値まで加圧、いったん止めた後に減圧して血圧計の目盛りから最高血圧を測定します。続いてエアバルブを緩め、整脈音が消えたところでバルブを閉めて血圧計の目盛りから最低血圧を測定します。

*最初に聞こえる拍動音がコロトコフ音第1相で、この時点で目盛りを読むと最高血圧
が得られます。次に音が急にはっきりしてくるのが第2相で、また音調が代わって第3相となります。これらの違いがわからない場合、第1相を聞き逃して、実際より低く血圧を測定している可能性があるので注意が必要。コロトコフ音の第5相(聞こえなくなった時点)が最低血圧となります。

デジタル式血圧計の様に誰でも簡単に測定できる、というわけにはいかず、聴診器の使い方や減圧の要領、圧力計の針の見方など相応の修練が必要とされます。

点滴について・・・

病院間の転院や入退院時点滴を行いながらの搬送はよくあることです。実際搬送時は車椅子やストレッチャーで輸液バックをガートル架(点滴棒)にぶら下げて移動することになりますが、輸液バッグのセットは適正であるか、ベットからストレッチャーや車椅子への移乗時にチューブが体の下敷きになっていたり折れ曲がってしていないかなど、患者搬送事業者として最低把握しておくべきポイントをいくつか挙げてみます。

■搬送時におけるチェックポイント
①点滴ボトルの高さ:刺入部から液面までの適切な高さ→80~100cm、心臓から27cm以上の落差を確保(末梢静脈には10~20mmHgの圧力がかかっている為心臓から27cm以上<注1>の落差が無いと滴下しない)
②刺入部位:体の下敷き等による圧迫の有無、ドレッシング材<注2>のはがれ
③輸液ルートの流れ:輸液ルートが屈曲・圧迫されていないこと、ドリップチャンバーにて滴下確認、等
<注1>20mmHgは約272mmH2O(1mmHgは約13.6mmH2O)
<注2>ドレッシング材についての参照先はこちら

特に長距離の搬送においてリスクはより高くなると思います。車の揺れや振動(高速走行時は特に注意)によって滴下速度が変わってしまったり(厳密な管理が必要な場合は輸液ポンプを使うケースとなるが・・・)、輸液ルートが最悪抜けてしまったりなど看護師さんの対応が必須になってしまいます。

☆おまけ講座:点滴関係の基礎知識☆
■点滴の投与時間
・1分間の滴下数
=1mLの滴下数(20滴)×指示総量(mL)/指定時間(時間)×60(分)
・点滴時間(時間)
=1mLの滴下数(20滴)×指示総量(mL)/60(分)×1分間の滴下数
■点滴セットにおける1mLあたりの滴下数
→成人(20)、小児(60)
■その他名称
・クレンメ:輸液ルート内の流れを一時的に止めたり(クランプ=閉塞)、滴下を調整するもの。ローラークレンメ、ワンタッチクレンメ、スライドクレンメ
・点滴筒(ドリップチャンバー):点滴の滴下数を目視確認できる。

輸液ポンプについて・・・

83_largeより確実に輸液投与が必要な患者に対して輸液ポンプを用いるケースが多くあります。当然医療移送においてはこのような患者を搬送することも想定しておかなければなりません。機器の取り扱いについては医療従事者の範囲なのでここでは割愛しますが、前面の操作パネル面を開けると輸液チューブを装着する溝が有り、ここに各種センサーや輸液を圧送する機構(ローラー方式やベリスタルティック方式、またはその複合式)などによって輸液をコントロールする仕組みになっています。この輸液ポンプを使用しなければならない搬送における、車内で機器を使用する場合の注意点を明記してみます。

■輸液ポンプ使用に当たっての注意点
①車中にて使用する場合、電源はかならずアース付きの正弦波インバータを使用。
内蔵バッテリの使用可能時間は機種・電池の劣化度合いで異なるので、移動時等AC
電源の取れない場合のみの使用に留めること。
②輸液ポンプ作動が正常であるか確認(例:テルモTE161Sでは「開始」表示ランプ
が緑色に点滅)
③点滴中、刺入部・輸液ルート全体・患者の全身状態に注意して継続的に観察する
ことが必要(点滴の滴下状況を点滴筒で定期的に確認)

さらに、輸液ポンプには万が一の場合を知らせるアラーム(警報、ブザー)機能が
あります。その時に慌てない様に、輸液ポンプのアラーム対応について確認して
おきます。(判断及び対応は医療従事者に委ねます)

■輸液ポンプ各アラームの原因と対応
①閉塞アラーム:輸液ルートが何らかの原因で遮断され輸液が送られていない状態。
(原因1)クレンメ・三方活栓等により輸液ルートが閉塞→クレンメ・三方活栓部を確認、開通させる。
(原因2)輸液ルートの屈曲・圧迫により輸液ルートが閉塞→屈曲・圧迫有無確認、解除する。
(原因3)末梢静脈ライン内での凝固血液・薬剤の結晶等による閉塞→輸液ルートへの逆流確認、完全閉塞の場合は静脈内留置針入替
②気泡混入アラーム:輸液ルートが何らかの原因で気泡混入
(原因)輸液ルート内気泡混入→停止スイッチを押しクレンメを閉じる。
*輸液ルートの開放は感染防止の為行わない。またフリーフロー防止の為必ずクレンメを閉じてから対処する。
③電圧低下アラーム:AC電源が供給されず、内臓バッテリの電圧が規定以下になって
しまった状態。
(原因)AC電源コード接続忘れ、外れなど。また車内インバータ不良や故障→AC電源コードの接続確認、復旧。インバータ確認、交換。
*車内でのAC電源コードの取回しに十分注意。インバータの電源は単独ラインを確保、アクセサリから取らないこと。予備保有。

■アラーム対応時の注意点
・フリーフロー発生を防ぐ:薬剤が全開状態で自然落下投与されてしまわないように
必ず「クレンメを閉じてから」ドアを開け、輸液ルートを外すという手順を厳守すること。
・輸液ポンプ作動時の不滴下防止:輸液チューブは正しく真直ぐにセットすること。
事後点滴チャンバーで滴下確認をすること。

なお、搬送時における車内での輸液ポンプの設置場所は、点滴バッグ直下の点滴棒に
専用台をクランプ固定しますが、ストレッチャー搬送時に限り車内に用意した別の点滴棒に備え付けます。これはストレッチャー専用の点滴棒が収納式の為、細くポンプ重量の荷重に対して安定性が悪くなる恐れがあるためです。車の振動や予期せぬ大きな揺れ、体動等、万が一に備え(長距離搬送では特に)予備の輸液ルートを確保して頂くことも必要かもしれません。

☆おまけ講座:輸液ポンプ概要(テルモTE161Sの場合)☆
84_large■消費電力:AC時/20VA、DC時/11W、内蔵バッテリ(Ni-Cd電池)連続使用時間/約2時間(流量25mL/hでの連続送液、周囲温度25℃、新品バッテリ満充電時)
■ポンプ方式:「ミッドプレス」方式(チューブを完全に押しつぶさずに送液する機構を設けたペリスタルティックフィンガー方式)
■外形寸法:87(幅)×218 (高さ)×188 (奥行)mm (突起部を含む)、重量2.1Kg

(旧ブログ2014年06月18日作成記事の転載)

シリンジポンプについて・・・

85_large微量の薬剤を精密に投与したり高濃度の薬剤を投与する(微量投与で作用する薬を投与する)必要がある患者に用いられるME機器です。シリンジポンプを使って投与される薬剤は、微量な誤差によっても命にかかわるような大変危険な薬剤がほとんどで、その取り扱いについては細心の注意が必要となります。搬送時は設定その他は全て医療従事者によって行われますが、設定にかかわるレバーや操作ボタンに触れたりしない様十分注意するのはもちろんのこと、搬送機材への設置(着脱)時や車への搬出入時には特に細心の注意を払う必要があります。

■シリンジポンプ使用に当たっての注意点
①車中にて使用する場合、電源はかならずアース付きの正弦波インバータを使用。内蔵バッテリの使用可能時間は機種・電池の劣化度合いで異なるので、移動時等AC電源の取れない場合のみの使用に留めること。
②シリンジポンプは輸液ルートの患者側接続部と同じ高さで設置すること。
→薬剤が急速に投与されるサイフォニング現象を防止するため。
③万が一ぶつけたり落としてしまった場合、外観的に異常が見られなくても使用不可
となりますので機器の設置・固定時には特に注意のこと。

シリンジポンプには万が一の場合を知らせるアラーム(警報、ブザー)機能があります。我々非医療従事者ではどうしようも出来ない項目ですが、その時に慌てない様に、シリンジポンプのアラーム対応について確認しておきます。(判断及び対応は医療従事者に委ねます)

■シリンジポンプ各アラームの原因と対応
①閉塞アラーム:輸液ルートが何らかの原因で遮断され輸液が送られていない状態。
(原因)輸液ルートが閉塞→a)三方活栓部や輸液ルートの屈曲・圧迫など閉塞部確認する。b)輸液ルートの三方活栓やクレンメを閉じ、シリンジポンプのロック式延長チューブを外し、高くなった内圧を逃がす。(ボーラス注入の防止)
c)再接続し、閉塞部を開放する。
②残量アラーム:薬剤の残量が少なくなった状態。
(原因)シリンジの薬剤残量が少なくなったため→継続して薬剤を投与する場合は事前に別のシリンジに薬剤を準備しておく必要がある。(病院内では状況によって複数台のシリンジポンプを用意し計画的に交換する場合もある)
③閉塞+残量アラーム:薬剤が完全に注入された状態。
(原因)シリンジを押し切り全薬剤を注入し終わったため→継続して薬剤を投与する必要がある時は次の薬剤を計画的に準備しておく。
④押し子/クラッチ外れアラーム:シリンジの押し子やクラッチが外れた状態。
(原因)シリンジのセット不良など→輸液ルートの三方活栓・クレンメを閉じてシリンジの押し子をセットし直してから三方活栓・クレンメを開通させ再開。
⑤シリンジ表示ラインの点滅:シリンジ設定不一致
(原因)使用されているシリンジ型と設定された型が異なる為→適合する型のシリンジを使用する、または設定値の確認。
86_largeなお、搬送時における車内でのシリンジポンプの設置場所は、極力患者側接続部と同じ高さで設置することとなります。当社で使用するストレッチャーの場合、車入時のレイアウトスペースの都合上、右写真の位置にストレッチャー車載完了後に設置しています。また、車の振動や予期せぬ大きな揺れ、体動等、万が一に備え(長距離搬送では特に)予備の輸液ルートを確保して頂くことも必要かもしれません。

☆おまけ講座:シリンジポンプに関係する基礎知識☆
■シリンジポンプ仕様概要(テルモTE-331Sの場合):
87_large・消費電力:AC時/16VA、DC時/7.5W、内蔵バッテリ(Ni-Cd電池)連続使用時間/約3時間(流量5mL/hでの連続送液、周囲温度25℃、新品バッテリ満充電時)
・セルフチェック機能:全ランプが3回点滅し動作インジケータが赤・緑の点滅を繰り 返しブザーが鳴る。(機種により異なります。)
・外形寸法:322(幅)×114(高さ)×115(奥行)mm、重量1.8Kg
■とっても危険なサイフォニング現象:
患者側接続部よりシリンジポンプが高い位置にあると、万が一シリンジの固定が不完全だったり外れてしまった場合、その高低落差により薬剤が大量注入されてしまうこと。
参考動画:九州大学病院看護部
シリンジポンプの安全な操作と管理 1-10サイフォニング現象

■とっても危険なボーラス注入:
内圧が高いまま閉塞を解除すると一気に患者へ薬液が注入されてしまうこと。輸液ラインのチューブ屈曲、クレンメの開け忘れ、フィルターの詰まり等により閉塞状態が発生した場合、輸液ラインの出来るだけ下流をクランプしてから輸液ラインの内圧を開放し、その後閉塞の原因を取り除いてから開始する必要がある。
■シリンジポンプを用いる主な投薬剤:
・カテコールアミン(昇圧剤):過量・急速投与により急激な血圧上昇、それに伴う
出血や頻脈、不整脈を起こす。イノバンなど
・硝酸薬(血管拡張剤):過量投与による血圧低下を起こす。ミリスロールなど
・カルシウム拮抗剤(降圧剤):強力な降圧効果(血管拡張)を有し、過量投与で低血圧を起こす。ヘルジピンなど
・インスリン:正確に投与されないと低/高血糖が起こる。ヒューマリンなど
・抗不整脈薬:期外収縮(異常な刺激によって心臓が本来の周期を外れて早く収縮
する不整脈のこと)に対して投与される。局所麻酔薬なので過量投与で血中濃度が
上昇すると中毒症状が起こる。(不安・興奮・多弁・意識消失・全身痙攣など)
重篤化すると呼吸停止・血圧低下・徐脈・心室性不整脈が起こる。キシロカイン等
・鎮静剤:過量投与で低血圧・呼吸抑制・覚醒遅延が起こる。
・抗がん剤
・抗凝固剤

(旧ブログ2014年06月22日作成記事の転載)