「かん水」は中華麺やワンタンの皮などに用いられる食品添加物で、中華麺等特有の風味・食感・色合いなどを出す目的で使用されます。
かん水の成分は、食品衛生法に基づき「炭酸カリウム」「炭酸ナトリウム」「炭酸水素ナトリウム」及び「リン酸類のカリウム塩又はナトリウム塩」のうち1種類以上を含むアルカリ性の液体又は粉体と定義されています。
しかし、流通するかん水によってその成分比率はマチマチで、同じ分量を使っても出来る麺の品質には少なからず違いがあるように思われます。
熊本のいっぷくラーメン店主、ラーテンさんのご協力を得て、このかん水の成分差によってどの様な影響を麺に与えるのか、確認してみました。
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代表的な「かん水」 |
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■かん水の働き
小麦粉にかん水を加えることで主に以下のような働きがあります。
・蛋白質に作用し、伸展性、弾力、風味を与える。
・澱粉に作用し粘りを与える。
・フラボノイド色素に作用して黄色に発色する。
■各種成分別の役割
・炭酸カリウム→麺の酸化防止、発色・香りを促進
・炭酸ナトリウム→風味
・リン酸塩類→炭酸カリウムの補助剤として、変色・乾燥・酸化などを防止する。保水効果や歯切れ良さ。
■使用したかん水
@炭酸カリウム主成分のかん水
成分:炭酸カリウム(81%)、炭酸ナトリウム(10%)、リン酸水素ナトリウム(6%)、ポリリン酸二ナトリウム(2%)、ピロリン酸四ナトリウム(1%)
A炭酸ナトリウム主成分のかん水
成分:炭酸ナトリウム(100%)
■かん水濃度調整データ
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水(水道水)(mL) |
使用したかん水(g) |
計測したボーメ度 |
水温(℃) |
室温(℃) |
湿度(%) |
炭酸カリウム |
1760 |
83 |
6.0 |
18 |
22.4 |
54.8 |
炭酸ナトリウム |
1890 |
77 |
6.0 |
同上 |
同上 |
同上 |
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■調整時に気が付いた点
データでも示されるとおり、炭酸カリウムの多く含む炭酸カリウム主成分かん水の方がボーメが低く出るようです。2つのかん水には水に対する溶解度の違いがあり、資料によると水温10℃の水に対する溶解度は炭酸カリウムが110g/100mL、炭酸ナトリウムが10g/100mLと大きな差がありました。従って粉末かん水の水への溶け方も炭酸カリウム主成分かん水の方がきれいにすばやく溶けます。炭酸ナトリウム主体のかん水はかなり長い間撹拌したのですが、少し塊が残ってしまうくらいです。
また、これは感覚的なもので具体的に数値化することは出来ませんが、炭酸カリウム主成分かん水と炭酸ナトリウム主体のかん水をそれぞれ指につけてこすってみると炭酸カリウム主成分かん水の方に多少「ぬめり」を感じました。多分指先の脂質か蛋白質に反応したのではと想像しますが、残念ながら説明できません…もし蛋白質に反応したとすると、この「ぬめり」が麺の喉越しなどに良い影響を与えるか?…など確認してみたいと思います。
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■材料
@炭酸カリウム主成分かん水、炭酸ナトリウム主体のかん水…各140mL(ボーメ6度)
A卵白…各30mL
B塩…各5g
C小麦粉(東福製粉Mゴールド、ちゃんぽん粉/いっぷくラーメンオリジナル)…各330g
D片栗粉…各5g
■環境条件等
@室温…23.3℃
A湿度…65.4%
*SATO計量器製ペンタイプ温湿度計PC-5100にて測定
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■かん水■
左が炭酸カリウム主成分かん水、右が炭酸ナトリウム主体のかん水。特に目視ではにごりも沈殿物も見当たらず、2つの違いは見当たらなかった。但しこのかん水はそれぞれ水に溶かしてから丸1日以上経過したもので、水に溶きたての水溶液は炭酸ナトリウム主体のかん水の方が若干白濁度合いが強かった。
資料ではリン酸塩類のキレート効果によるものと説明されているが、水質によって影響の受け方が変わると思われる。
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■生地■
左が炭酸ナトリウム主体のかん水で作った生地、右が炭酸カリウム主成分かん水でつくったもの。写真では違いが分らないが、若干炭酸カリウム主成分かん水の方が発色が強かったように思える。写真は捏ねてから室温で1時間寝かせた生地。
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炭酸ナトリウム主体のかん水で
作った生地 |
炭酸カリウム主成分かん水で
作った生地 |
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■伸し@■
パスタマシンを使用するため、予め麺棒を使って粗く伸しておく。写真は炭酸ナトリウム主体のかん水で作った生地を伸しているところ。炭酸ナトリウム主体のかん水の方が若干伸びが悪い。
ちなみに麺棒は玉将さんから戴いたグラファイト製スペシャル麺棒です。感謝。
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■伸しA■
パスタマシンのローラーで。このパスタマシンはけんちゃんからの戴き物です。感謝。
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■麺帯■
左が炭酸ナトリウム主体のかん水で作った麺帯、右が炭酸カリウム主成分かん水の麺帯。 |
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■麺切り■
切り歯は2mm |
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■麺■
左が炭酸ナトリウム主体のかん水麺、右が炭酸カリウム主成分かん水麺。かん水の匂いと味は特に差は無い。引っ張ってみた時の麺の伸びは炭酸カリウム主成分かん水を使った麺の方が伸びる。
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炭酸ナトリウム主体のかん水で
作った麺 |
炭酸カリウム主成分かん水で
作った麺 |
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■試食の感想
あいにくスープストックを切らしていたので、お湯に塩ダレを溶いて各麺の試食となりました。
共に麺打ち後、8時間は上に布巾をかけた状態で室温で放置(23.9〜19.5℃、湿度65〜70%程度)、後12時間は野菜室にて保存(7.2℃、湿度52.3%)。茹で時間は1分10秒。
【食感】
炭酸ナトリウム主成分のかん水の麺は、噛んだときゴツゴツしたような感じを受けました。舌触りもほんの少しザラっとした印象がありますが、これは多分食べ比べない限りは分らない程度のものであると思います。炭酸カリウム主成分かん水の麺は、つるんとした舌触りを若干感じました。
【匂い】
かん水臭さは少量を茹でたこともあり、どちらもほとんど気にならないレベルで差異もありませんでした。
【味】
特に異常なものは感じられず、差異もありません。
食感に多少違いを感じましたが、それ以外は違いは感じられませんでした。自分の麺打ちのレベルでは使いこなせなかったということでしょう…
ただ麺がかなり若い状態なので、これを熟成させた時の違いが気になるところです。今回の麺をこのまま保存してみますので、後日違いの有無についてレポートを追加します。
尚、あくまでも麺打ち初心者が行った確認・評価故、もし誤り・不手際・不具合等がありましたら、是非ご指摘ご指導戴けます様、何卒宜しくお願い申し上げます。
E-mail: ramen@akatombow.jp
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炭酸カリウム主成分かん水の麺 |
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炭酸ナトリウム主成分のかん水の麺 |
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